小倉かまぼこ株式会社

熱々の天ぷらをお客様に手渡して100年

北九州の台所、旦過市場で練り物製品を販売する小倉かまぼこ株式会社。大正9年から100年に渡り市民の食卓を彩ってきた。天ぷらやかまぼこなどの練り物は全て小倉北区紺屋町の本店で職人が毎日すりあげ、手作業で製造している。
中でも有名な「カナッペ」は魚のすり身に玉ねぎ・にんじん・胡椒を混ぜ込み、周りを薄いパンで巻いてカラッと揚げた北九州名物。旦過市場の食べ歩きメニューの定番だ。4代目社長の森尾泰之社長のおばあさまが考案してから60年以上親しまれ、ローカルTV局から全国ネットの番組までひっぱりだこだ。

お客様の声を励みに

練り物職人である田中佑樹さん(35歳)は社長や会長とともに毎日最高級のすり身をすりあげ、かまぼこや天ぷらを一つひとつ丁寧に製造し、店頭に並べる。作り手である職人だが、店頭で接客をすることもあるといい、社交的で威勢のいい接客は常連客にも人気だ。
「従業員皆家族のようなアットホームな職場なので、コミュニケーションにも壁がないですね。料理などができるわけではなく入社しましたが、一から丁寧に教えていただきました。職人としてはまだまだ技術が足りないこともありますが、新商品の開発やお客様の『美味しかったよ』という声にやりがいや喜びを感じながら成長できていると感じます」

市場という世界に若い人こそ足を踏み入れて

ネット通販で必要なものがほとんど手に入る現代、若い人が日常の買い物で市場に来るということは少ないだろう。
「それでも市場にはお客様の生活により近いコミュニケーションや文化とも言える商売の形があります。また扱う商品も職人の技が生み出す伝統のものです。そんな市場で働く魅力をもっと高め、市場の仕事をやりたいと言ってもらえるように環境を整えていきたい」と森尾社長は語る。
お客様と世間話をしたり、直接商品の感想を聞いたり、密度の濃いコミュニケーションが対面販売にはある。コロナ禍でそれも難しい日々が続くが、今の若い人にこそそういう体験をしてもらいたいという。

4代目社長の目指すまちづくり

森尾社長が父和則会長から受け継ぐ教えは、「自分の店の集客を考えるのは当たり前、旦過市場に人を集めるには、さらには小倉の街に人を集めるにはどうすればいいかを考えなさい」というものだ。旦過市場は再整備事業も始まり、現在の姿は数年後には見られなくなってしまう。変わりゆく旦過市場の10年後50年後の未来を考えながら、北九州の魅力として共に発信してくれる仲間を求めている。